第二十一話 最終弁論

ここでは、「第二十一話 最終弁論」 に関する記事を紹介しています。
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


第二十一話 最終弁論

不眠不休でビデオゲームをして死亡した15歳の息子Wesley Beller の母親は、中毒性を有するゲームを開発したゲーム会社を訴えますが、被告のゲーム会社を弁護するBrad Chaseは、原告の母親の訴えは本当の中毒に苦しみ立ち直ろうとする患者(例えば麻薬患者)に失礼極まりないと一蹴します。

  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

アメリカはいわずと知れた訴訟社会で、故に発生する理不尽な訴訟もあります。記憶に新しいところではトヨタ社のリコールに便乗した訴訟の嵐、有名な逸話ではメタボをファストフードチェインの責任とする訴訟、ファストフード店のコーヒーが熱くてやけどしたから起こした訴訟、癌患者がタバコ会社を訴える訴訟等々、訴訟がビジネスの種や話題づくりのようになっている産業背景もあり、日本人は耳を疑ってしまうような訴訟もあります。

福島原発の放射能は地球の裏側でも観測されているそうですから、近い将来に、東京電力と日本政府の拙速な原発事故対策で米国での安寧な市民生活が脅かされたとして東京電力や日本政府が米国の裁判所で訴訟の対象となる日が来るかもしれません。
  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

さて、Bradの弁論はかようなある意味原告側の無謀な態度が生んだ凄惨な結果に対して起こされた無茶苦茶な訴訟(ただし原告側は大真面目)の一つといえそうです。そんな無茶振り訴訟に対してはどう立ち向かえばいいのか、この最終弁論はひとつの答えを示しています。すなわち、無謀ではない真摯な態度から生まれた真に凄惨な結果との比較を以って、当該結果の相対的な過失ぶりを浮き立たせるのです。

  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ではもし福島原発にからんで東京電力や日本政府が米国の裁判所で訴訟の対象となったときにこのBrad式論法が通用するのか?残念ながら難しそうです。なぜなら相手方は一方的に被害を被っているだけで、原告側に過失が存在していないからです。


  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

相手方に過失の存在している無茶な訴訟に対応するBradの論旨展開は、典型的な起承転結の構成をとっています。

起:[導入:後段の論旨展開のための前置き]
Bradの作戦として、本訴訟に対して弁護士でありながらも個人的に見解する、と断りを入れます。

Your Honor, I know I’m supposed to be a dispassionate advocate for my client’s position, but I have to tell you that this case, it just makes me mad.

承:[前置きした理由としての事例:個人的に知っている凄惨な事情との比較]
ゲーム・電話・テレビなどいろいろな中毒があるといっても、生死にかかわる例えば覚せい剤(crystal meth)中毒なんかとは一緒にできるものではない。もし覚せい剤中毒がビデオゲーム中毒に変えられるなら、覚せい剤中毒患者はすぐにでも変わる。

You see, I know someone who is addicted to crystal meth. This is a lethal drug. It would have killed her if she hadn’t stopped using it. So when I hear people talk about being addicted to their blackberry, soap operas, video games, believe me, if anyone who’s addicted to crystal meth could suddenly wave a magic wand and be addicted to video games instead, they would do it in a heartbeat.

転:[訴訟の根拠を拡大解釈する理屈へのけん制]
原告が主張するようにゲームはたしかにドーパミンを発生させる効果を有しているが、ドーパミンは人が楽しいと感じる瞬間にはいつもあふれ出ていて、例えばアインシュタインは相対性理論を考えているときにおそらくドーパミンに溺れていたという事例を引く。

Now, you heard testimony that playing this game raises your dopamine level, we don’t deny that. But the fact is, anything you enjoy doing raises your dopamine level, sports, chocolate, exercise, sex, on and on and on. When Einstein was developing his theory of relativity I’m sure that his dopamine level was through the roof!

結:[ゲームと死亡の因果関係の立証の難しさ]
熱中状態と中毒の境界は線引きが難しく、制御できない熱中を論拠に訴訟を起こしているのであれば、中毒(特に中毒と真剣に戦う患者)に対する冒涜に相当すると両断し、ゲーム開発と死亡の因果関係を否定する。

But where do we draw the line between addition and passion? The fact is this case is an insult to anyone who has a real addiction to a harmful substance. Now, we are all said that Wesley Beller is dead, but Alcove Games did not cause his death.

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

東京電力や日本政府が米国の裁判所で訴訟の対象となったらどのように弁護するのか、敗訴して多額の賠償金を支払ったら日本の財政はさらに悪化しそうです。うーむ、考えすぎかな?。

  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

///
訴えてやる!!!―ちょっとおかしなアメリカ訴訟事例集訴えてやる!!!―ちょっとおかしなアメリカ訴訟事例集
(2003/10)
ローラ・B. ベンコ、アティラ ベンコ 他

商品詳細を見る
スポンサーサイト


コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://hyoronglish.blog59.fc2.com/tb.php/335-612e2eb3
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。