刑事裁判の原則

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昨年に日本で裁判員制度が始まり、今のところ裁判員を務めていない私も、裁判員を務める機会に巡り会う確率は年を経る毎に高くなります。裁判員として刑事裁判に参加し、人に刑罰を与える判断を下すとしたら、何をどう考えれば良いのかわからない人は私を含めて多いと思います。役所の人の案内や雰囲気に流されることなく、原理原則を踏まえた上で判断を下したいものです。(このへんは「アラバマ物語」や「十二人の怒れる男」でその精神を学びたいですね。)

第十五話 生命維持装置に繋がれた植物状態の猫(Barry Manilow)は果たして生きているのか死んでいるのか、解釈の分かれるところです。

Attorney Morrison:
We have an affidavit from the vet. Barry is 99.9% dead.
私たちは供述書を獣医から入手しましたが、Barry は 99.9% 死んでいます。

Brad Chase:
Which makes him 0.1% (point one percent) alive. The glass is half full, Your Honor.
彼は0.1%生きているということです。グラスは満たされていないのです、裁判長。

上記の会話は猫の扱いを巡る民事の場面の会話ですが、刑事裁判の原則を理解するに格好の材料かも知れません。以前紹介したThe Judicial Worldという雑誌の第五号(JW No.5 司法界のタブー ジュディシャル・ワールド (THE JUDICIAL WORLD) )で、四宮啓弁護士(早大院教授)が刑事裁判の原則をわかりやすく紹介していますので、多くを引用させていただきながら刑事裁判の原理原則をまとめてみます。

まず、刑事裁判を定義付けます。学術的な定義ではなく内容に着目するなら、刑事裁判とは犯人を捜す場ではなく(犯人を捜すのは警察の仕事です)、警察が捜査の果てに捕えた人がいて、検察制度に基づいて検察官が「この人が犯人です」と起訴した容疑者と犯行内容を、警察・検察以外の人の目が検証する過程です。

刑事裁判には、民事裁判には見られない大原則があります。
  • 民事裁判:裁判所は証拠を見るまでは、訴える側も訴えられた側もどちらが正しいことを主張しているのかわからない。
  • 刑事裁判:検察が起訴した時点では被告人は、「犯人かどうか疑わしい」のではなく「無罪」である。
即ち、刑事事件では被告人が最初から勝っている状態で裁判が始まり、これを「無罪推定の原則」と呼びます。

弁護士が身につける弁護士バッジは、ひまわりの花をデザインしたバッジで、バッジの中央に「公平」を表す天秤が彫刻されています。この天秤の一方の皿を原告(又は検察)、もう一方を被告(又は容疑者)とすると、両方に重りが乗っていない状態が民事裁判の始まりで、刑事裁判の始まりは被告側に天秤が傾き床に完全についた状態(無罪)です。

刑事裁判では、検察官だけが有罪の証拠(状況証拠や物的証拠)という重りを天秤の反対側の皿に一つずつのせ、被告側に傾いていた天秤を検察側にひっくり返す責任(立証責任)を負います。検察の側に傾かず、検察側の皿と床の間にわずかでも隙間があるなら、天秤はひっくり返ったといえず、この隙間を「合理的な疑問」と表現します(Boston Legalで描かれる米法の世界ではReasonable Doubtとして何度も登場してきています)。十分な証拠が集まれば検察側の皿がカタッと音をたてて床につき、無罪推定が覆りますが、皿が床に着かない限りは(わずかでも隙間があれば)、被告人を有罪と判断できません。

検察官が提出した証拠が信用に足り、天秤を押し下げるだけの力があるか否か、白黒をつけるというよりは黒(=有罪)か黒でないか(=有罪と判断できない)、を判断する役割を担うのが裁判員の務めの一つでると表現できます。裁判員は、検察の挙げる証拠の信用力を判断するに際し法律の知識も裁判の経験も不要で、むしろ日常生活をベースに毅然と証拠の内容を判断する態度を要求されます。裁判員は有罪判定のあとで、処罰の内容を決めます。処罰の内容はまた別の難しさがありますが、検察官と弁護人の主張を聞き、自身の正義の感覚に照合して適切な判定を下すのです。

会話例に戻りますと、「99.9%死んでいる」とは、生死の天秤は「死」の側に完全に傾いているわけではなく、「死」と床の間に0.1%の隙間があるので、「死」と判定できない、といういい分です。なお会話例では天秤ではなく、グラスが満たされているか、満たされていないか(half full)、と表現しています。

刑事裁判の真実―あなたが裁判員なら、有罪か無罪か刑事裁判の真実—あなたが裁判員なら、有罪か無罪か
(2009/11)
飯田 一也

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