FoxのドラマBoston Legalのしゃれた会話を題材に、英会話を学びたいと思います。

■ブログ管理人よりご挨拶申し上げます■

当ブログを読んでくださりありがとうございます。当ブログを管理しているLalalanと申します。よろしくお願い致します。

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  • 当初は自分自身の整理を目的に記事をアップしていましたが、最近ではすっかり読み手の存在を意識しながらアップしています。
  • 今後とも牛歩で進む所存ですが、よろしく「拍手」「コメント」のほどお願い申し上げます。
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    → 英会話教材としてのBoston Legal      → Boston Legal概論


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Let's help people suffered from the disaters Think Daily


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第十五話 レイプ被害に遭い、意識不明のまま搬送された病院がCatholicの教義を信奉する病院であったため、受精後72時間以内に処方しなければ妊娠回避の効果を発揮しない薬を処方されなかった故に妊娠した被害者少女を弁護するShirleyの最終弁論です。

[一般論 ⇔ 個別論のアプローチ]
Shirleyの弁論は一般論と本件の個別論とを絡み合わせながら、大きく3部で構成されています。一般論を引く理由は、事件の社会的な重みをわかりやすく説くためです。また個別論は、一般論が本件のように個別具体化した事実を陪審に植え付け、本件は身近な脅威として存在する問題なのだという認識を植え付けるとともに、陪審に本件の意味を理解させるためです。

[リズム感の良いスピーチ]
Shirleyの弁論は複数の事例を箇条書き的に述べ立てます。またそのときの箇条書き的な叙述の方法がすべて同じような音で始まる叙述となっており、聞く者の理解を促進します。

1. 医療の現場で定着しているインフォームド・コンセントという一般論的な観点から本件を考えようと仕向けます。

One of our many rights in this country is what is called informed consent. Every patient has the right to decide what happens to his or her body and to make that decision a patient needs to rely on her doctor to disclose all available options;
  • Do you want chemo therapy or surgery for a brain tumor?
  • Do you want to amputate below the knee or hope for the best and risk death from gangrene?
  • Do you want to prevent pregnancy or have your rapist’s baby?
       → brain tumor: 脳腫瘍, ◆【略】BT, ◆【同】cerebral tumor

amputate【他動】〔手足を〕切断する

gangrene
【名】《医》壊疽{えそ}
【自動】《医》〔体の一部に〕壊疽を(引き)起こす
【他動】《医》壊疽になる

2.インフォームド・コンセントに関する一般論を、本件に当てはめ被害者の視点で個別論として再構築します。

Amelia Warner didn’t get to chose;
  • She was deprived of a crucial medically relevant option because her doctor did not approve of it.
  • She didn’t choose to receive health care restricted by religious doctrine.
  • She was taken to the ER unconscious.
  • She relied on her doctor at St. Mary’s to provide her with proper care or refer her elsewhere and he failed her.

3. 本件での持つ社会的な問題性を浮き彫りにし、陪審の評決に対する意識を高めます。

Twenty-five thousand women will become pregnant from rape this year. If all of those women took this emergency contraception, twenty-two thousand of those pregnancies could be avoided. Doctors provide a crucial public benefit to a diverse society and we cannot condone it when they impose their own religion on patients whom they are professionally obligated to serve, especially patients in their most vulnerable states;
  • A teenage for example, brought in to an emergency room after a brutal rape.
  • A teenage who is now left to choose in violating her own moral principals in terminating the pregnancy or postponing college to deliver this child.
  • A child conceived against her will, a direct result of the most traumatic ordeal she has ever endured.
   →     Condone 【他動】~を大目に見る、容赦する、許す、見逃す
・No religion condones the murder of innocent people.
: 罪のない人々を殺すことを容認する宗教はない。

baby conceived through IVF (in vitro fertilization) 《the ~》体外受精児

ordeal 【名】 厳しい試練、難儀、苦しい試練、試練

///

医療サービスを提供する側ではなく国語研究所が提案する、インフォームド・コンセントを言葉の観点で捉えようとする評価したい試みですね。

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(2009/03/12)
国立国語研究所「病院の言葉」委員会

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第十五話 レイプ被害者の少女が意識不明のまま搬送された病院はCatholicの教義を信奉する病院であったため、受精後72時間以内に処方しなければ妊娠回避の効果を発揮しない薬は少女に処方されませんでした。その結果妊娠してしまった被害者は、そんな病院を訴えますが、宗教教義に従う治療について裁量を認められている宗教病院側は訴えを退けようとします。被害者を弁護するShirleyは、証言台に立つ病院側の教義解釈のご都合主義を突きます。

Shirley Schmidt:
But that (you often work weekends) would put you squarely on the job during the Sabbath. 
Exodus 35:2 states that he who works on the Sabbath should be put to death.
 → 休日も働くことは教義に反するのでは?と問いかけます。

Shirley Schmidt:
Mark 16:18 states that a believer can drink any deadly thing and not be harmed.
As a physician, are you ready to say that your Catholic patients can take a swig of arsenic and suffer no adverse effects?
 → 信ずる者は何を口にしても傷つかない、というではないか、と問いかけます。

Sabbathは、sabbaticalといった、日常よく使われる語の元になっている言葉ですが、キリスト教圏の生活に無縁な日本人には知らないと何のことかわからない単語ですね。意味と訳語は是非辞書で調べてみてください。またtake a swig of はイディオムで、

    take a last swig of ~
      (…から)~の最後の一口を飲み干す
      表現パターンtake a last swig of ~ (from)
    (英辞郎)

で、arsenicは砒素ですから、いくら何でもShirleyの二つ目の突っ込みは字面の揚げ足取りですね。さて、そんな突っ込みに証言台の医師もキリスト教の言葉で応酬します。

Dr James Tusten:
God was fairly straightforward with, “Thou shalt not kill.”

捕鯨反対で話題になったSea Shepherdや、その他動物の乱獲に反対する動物愛護団体の掲げるプラカードにはしばしば “Thou shalt not kill” の文字を認めます。現代英語に直すとYou shall not kill, 日本語では一般的に「汝殺す勿れ」とされます。

《旧約聖書》の出エジプト記 (Exodus)、申命記 (Deuteronomy) に記されている"Thou shalt not kill"は、もとは神からモーゼとイスラエルの民に言い渡された戒めであり、十戒(Ten Commandments)として、キリスト教、ユダヤ教、さらにはイスラム教の道徳基礎となっています。イスラムでモーゼはMusaで、もっとも偉大な預言者の一人とされています。

「古代の宗教的戒律や倫理的教訓がほとんどすべて「汝殺す勿れ」「盗む勿れ」「姦婬する勿れ」「己の欲せざる所を人に施すこと勿れ」といった特定行為のミステイクを禁止する否定命令の形で表現され、ネガティヴ・メソドロジーが人間にとって根源的な行動原理だった。」「問題は西洋近代になってから、「…する勿れ」という否定命令の代わりに「…せよ」というポジティヴな肯定命令の形の命令が多用されるようになり、こうした行為指向型の当為の流行がわれわれ現代人にとって倫理的な大問題を提起するに至っている」
http://fs1.law.keio.ac.jp/~popper/v8n2fujimoto.html

藤本隆志氏による上記の指摘は正鵠を射ておりまして、この “Thou shalt not kill” も中絶・死刑・戦争等の現代社会の闇に巣食う人間の殺生の問題を複雑に取り込みながら解釈の幅を広げてきました。

英訳ではYou shall not killと訳されてきましたが、20世紀になって原語の解釈の進展等から、You shall not murderの方が適当とされるようになりました。このフレーズは意図せぬ殺人または犯罪者の処刑は含まれるが、戦争による殺人は意味していないという解釈(死刑は反対、戦争はOK)が主流のようです。

以下に“Thou shalt not kill”の解釈をまとめてみました。
英訳 解釈
伝統的解釈 Do not murder 殺人は大罪
カトリック、ルーテル(ルター派) You shall not kill (Roman Catholic)
You shall not murder (Lutheran)
犯罪者の処刑は必ずしも禁止されない
堕胎はこの戒律に反する
戦争は禁止されない
Typical Protestant view 自分・他人の命を大切に
自分・他人の命を不用意に奪ってはならない(正当防衛、死刑戦争は除かれる)
命を奪いかねない行為も許されず、言動や怒りも許されない
Islam 犯罪ではない場面で他人を殺害したものは、すべての人間を殺したとみなされる
Qur'an 17章, "Al-Israa" ("The Night Journey") Do not kill unjustly 人生を終わらせるのはAllahの神聖な業 (ただしもっともな場合は許される)

今回の記事は以下を参照しています。
http://en.wikipedia.org/wiki/Ten_Commandments
http://www.deathreference.com/Sy-Vi/Thou-Shalt-Not-Kill.html

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第十五話 Alanの交渉は、相手に提案が受け入れられることなく決裂します。Alanは相当に柔和な態度で相手のプライドを傷つけないように提案したつもりでしたが (Alan Shoreの交渉術 − 1)、相手は無碍に申し出を却下します。相手方の態度を受けてAlanは自分の態度を硬化させ、それなら受けて立つ、いやむしろ痛い目に遭わせてやる、と宣戦布告に出ます。

宣戦布告に出るのも交渉術で、僕を起こらせると怖いよ、態度を変えるなら最後のチャンスだよ、以下に紹介するAlanの台詞の最後にあるように、人々の心象を悪くする障害者差別で訴えるよ、というメッセージを背後に忍ばせています。

Alan Shore:
I take it we’ve stopped being nice. I know I have. Mr. Tremont, Marissa has a disability, and you and your institution are discriminating against her.

前向きなな交渉はやめるということですね。私はやめましたよ。Mr. Tremont、Marissaは障害があって、あなたとあなたの学校は彼女を差別しているんです。

We’ve stopped being nice. I know I have. なんてリズムと語感が良くていいですね。むかし米国にいたころhot dogを食べるときに三枚目の友人が、

Do I need ketchup? I think I do.

と早口で独り喋りながら尋常ならざる量のケチャップをhot dogにかけていた姿を思い出します。
閑話休題。差別を主張するAlanに対し学校側は、当校は私立学校なのだからどんな扱いをしようが差別にはならない、と反論し、自身を含め学校には法曹資格を持っている人間が複数いるので、解釈には自信を持っていると一喝します。宣戦布告を受けて立った学校に対するAlanの台詞です。

Alan Shore:
Let me tell you two things about myself.
I too am a lawyer. I can be painfully vindictive and I do not play fair.

Lestor Tremont:
That’s three things.

Alan Shore:
See? Not playing fair already. And I’m just getting started.

軽いジャブを打って出るわけですが、相手を挑発するといますか、こけにすると言いますか、Alanらしい台詞です(Alanの挑発の巧みな技術については、Alan Shoreのキャラクター設定 (1) 及び (2) をご参照ください)。
最後も素晴らしい挑発で会話の幕を閉じます。

Lestor Tremont:
Mr Shore. Our school has been sued several times, never successfully.
Mr Shore. 私たちの学校は何度も訴えられましたが、一度も負けていません。

Alan Shore:
You know what they say, Lester. You never forget your first time.
聞いたことあるよね、Lester、初体験は絶対忘れないって。

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すっかり評論家/作家として定着したこの人は挑発も交渉も上手そうですね。

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私立学校に転入を希望する9歳の女の子は、成績優秀で美術センスもありますが、交通事故の後遺症で「笑う」表情を作れない障害を持っています。私立学校からは転入を拒否されたのですが(理由はおそらく障害)、児童を何としても学校に転入させるべく私立学校側と交渉するとしたら、皆さんはどう論旨を展開しますか?

第十五話 Alanの昔の職場の同僚Phyllis Deaverの9歳の娘Marissa Deaverは、学業成績優秀にして、類い稀な美術の才能も併せ持っていますが、有名私立学校への転入を拒否されます。Marissaは交通事故に会ってから神経に障害をきたし「笑う」という身体表現を持ち合わせません。母親のPhyllisは、この笑わない障害を理由にMarissaの転入は拒否されたと思っており、Alanに助けを求めます。AlanはMarissaと会話して彼女の能力を大いに評価し、何としても転入させたいというPhyllisの願いをかなえるべく私立学校にのりこみ、学校関係者を前にMarissaの転入許可を求めます。

出だしの社交表現は是非参考にしたいものです。

Alan Shore:
I’m Alan Shore. Thank you for seeing me. I won’t take up much of your time.
As you know I’m here regarding Marissa Deaver.

Lestor Tremont: Yes, we have her application in front of us.

Alan Shore:
Ah!. Delightful. We can all take pleasure in it together.

We can all take pleasure in it together なんて是非使ってみたい表現です。
さて、Alanの交渉の進め方は、以下の3部構成で展開されます。

一. 問題提起
まずはあくまで学業面の成績に焦点を当て、成績優秀者なんだから入学を許可しようよ、と訴えます。出だしでは美術の才能には触れていません。美術の才能については、話に念をおす場面とか、議論がこじれたときのために出す話題とすべく、後にとっておきます。

As you see, she’s obviously an exceptional student. She’s in the top ten percentile on her standardized tests, her grades have never dipped below an A-minus, and she pursues and excels in a broad range of extracurricular activities and yet she wasn’t admitted into your fine institution.

二. 懐柔
次に、学校側に間違いがあったと責め立てるのではなく、学校、受験者の双方に間違いがあったと主張し、自分の主張を受け入れて貰い易い下地をつくります。

We all make mistakes. And perhaps it was partially our fault. Her mother tells me she had a dreadful interview which sometimes happens especially considering the extenuating circumstances in this case.

三.提案
相手に聞く耳をもたせたところで、本題にはいり、提案を切り出す。提案は、競合校に勝てますよ、との学校側のメリットにも触れる。

My thought to rectify the situation is this, you re-interview Marissa, review her remarkable work and reconsider putting her on your roster at Adams Academy and let’s go beat our archrivals, whoever they are.

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第十五話 猫に繋がれた生命維持装置を外す/外さないで訴訟を起こし、弁護士を交えながらも互いをののしり合う前夫と前妻を前に、判事はウンザリ顔でいやみたっぷりに乗り気ではない旨を伝えます。

Judge Willard Reese:
We shall reconvene tomorrow and I will try not to remind myself that this is a day I will never get back.

明日再び会うとしましょう、そして私は自身に思わせないようにします、これは私が決して戻る日ではないと。
(放送では、「貴重な一日を無駄にさせてもらうよ」とわかりやすく訳されています)

“I will try not to remind myself that this is a day I will never get back” なんとも小粋と言いますか、Witの効いた台詞ですね。丸暗記してどこかで使えそうな台詞です。

Get back は極めて良く耳にする表現ですが、有形の「物」だけではなく、「時間」や「関係」といった無形の「概念」にも使えますが、ポジティブに取り戻す、リベンジに成功する、といった前向きな内容ですね。

Get back: Verb   
  1. recover something or somebody that appeared to be lost;
    1. "We got back the money after we threatened to sue the company";
    2. "He got back his son from the kidnappers"
    3. 類語)win back, acquire, get
  2. take revenge or even out a score;
    1. "I cannot accept the defeat--I want to get even"
    2. 類語)get even, avenge, retaliate, revenge, pay back, fix, pay off, get
  3. get back - get one's revenge for a wrong or an injury;
    1. "I finally settled with my old enemy"
    2. 類語)settle fight, struggle, contend -
http://www.thefreedictionary.com/get+back

協議がどの程度あほらしい内容であったかは、以下の二人の弁護士のやり取りを見ると理解できます。

Brad Chase:
Your Honor, let the record reflect that since the divorce Mr. Bridge has been late in returning the cat, fed him dry food only, did not have adequate litter box hygiene.  And was often seen calling the cat “stupid” in public.

裁判長、記録してください、Bridge氏は離婚してからというもの猫のもとに帰るのも遅く、食事はドライフードのみ、トイレも適切な設備を提供しませんでした。さらにしばしば人前で猫をバカ呼ばわりしていたんです。

Attorney Morrison:
As directed by the joint custody agreement, Mr. Bridge was required to make all veterinary payments.  And Ms Bridge, acting out of malice, took advantage of that by subjecting the cat to the most expensive treatments possible.

離婚時の二人の取り決めで、Bridge氏は獣医師代を全額負担しています。Bridge夫人は、嫌がらせで、それを逆手に取って猫に最も高額な治療をうけさせていたのです。

///

get backからBeatlesの名曲を思い起こす方も多いのでは・・・。
このタイトルがその曲を意味してるのかどうかはわかりませんが、一生Get backで食べて行けるのですから、素晴らしいですね。
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昨年に日本で裁判員制度が始まり、今のところ裁判員を務めていない私も、裁判員を務める機会に巡り会う確率は年を経る毎に高くなります。裁判員として刑事裁判に参加し、人に刑罰を与える判断を下すとしたら、何をどう考えれば良いのかわからない人は私を含めて多いと思います。役所の人の案内や雰囲気に流されることなく、原理原則を踏まえた上で判断を下したいものです。(このへんは「アラバマ物語」や「十二人の怒れる男」でその精神を学びたいですね。)

第十五話 生命維持装置に繋がれた植物状態の猫(Barry Manilow)は果たして生きているのか死んでいるのか、解釈の分かれるところです。

Attorney Morrison:
We have an affidavit from the vet. Barry is 99.9% dead.
私たちは供述書を獣医から入手しましたが、Barry は 99.9% 死んでいます。

Brad Chase:
Which makes him 0.1% (point one percent) alive. The glass is half full, Your Honor.
彼は0.1%生きているということです。グラスは満たされていないのです、裁判長。

上記の会話は猫の扱いを巡る民事の場面の会話ですが、刑事裁判の原則を理解するに格好の材料かも知れません。以前紹介したThe Judicial Worldという雑誌の第五号(JW No.5 司法界のタブー ジュディシャル・ワールド (THE JUDICIAL WORLD) )で、四宮啓弁護士(早大院教授)が刑事裁判の原則をわかりやすく紹介していますので、多くを引用させていただきながら刑事裁判の原理原則をまとめてみます。

まず、刑事裁判を定義付けます。学術的な定義ではなく内容に着目するなら、刑事裁判とは犯人を捜す場ではなく(犯人を捜すのは警察の仕事です)、警察が捜査の果てに捕えた人がいて、検察制度に基づいて検察官が「この人が犯人です」と起訴した容疑者と犯行内容を、警察・検察以外の人の目が検証する過程です。

刑事裁判には、民事裁判には見られない大原則があります。
  • 民事裁判:裁判所は証拠を見るまでは、訴える側も訴えられた側もどちらが正しいことを主張しているのかわからない。
  • 刑事裁判:検察が起訴した時点では被告人は、「犯人かどうか疑わしい」のではなく「無罪」である。
即ち、刑事事件では被告人が最初から勝っている状態で裁判が始まり、これを「無罪推定の原則」と呼びます。

弁護士が身につける弁護士バッジは、ひまわりの花をデザインしたバッジで、バッジの中央に「公平」を表す天秤が彫刻されています。この天秤の一方の皿を原告(又は検察)、もう一方を被告(又は容疑者)とすると、両方に重りが乗っていない状態が民事裁判の始まりで、刑事裁判の始まりは被告側に天秤が傾き床に完全についた状態(無罪)です。

刑事裁判では、検察官だけが有罪の証拠(状況証拠や物的証拠)という重りを天秤の反対側の皿に一つずつのせ、被告側に傾いていた天秤を検察側にひっくり返す責任(立証責任)を負います。検察の側に傾かず、検察側の皿と床の間にわずかでも隙間があるなら、天秤はひっくり返ったといえず、この隙間を「合理的な疑問」と表現します(Boston Legalで描かれる米法の世界ではReasonable Doubtとして何度も登場してきています)。十分な証拠が集まれば検察側の皿がカタッと音をたてて床につき、無罪推定が覆りますが、皿が床に着かない限りは(わずかでも隙間があれば)、被告人を有罪と判断できません。

検察官が提出した証拠が信用に足り、天秤を押し下げるだけの力があるか否か、白黒をつけるというよりは黒(=有罪)か黒でないか(=有罪と判断できない)、を判断する役割を担うのが裁判員の務めの一つでると表現できます。裁判員は、検察の挙げる証拠の信用力を判断するに際し法律の知識も裁判の経験も不要で、むしろ日常生活をベースに毅然と証拠の内容を判断する態度を要求されます。裁判員は有罪判定のあとで、処罰の内容を決めます。処罰の内容はまた別の難しさがありますが、検察官と弁護人の主張を聞き、自身の正義の感覚に照合して適切な判定を下すのです。

会話例に戻りますと、「99.9%死んでいる」とは、生死の天秤は「死」の側に完全に傾いているわけではなく、「死」と床の間に0.1%の隙間があるので、「死」と判定できない、といういい分です。なお会話例では天秤ではなく、グラスが満たされているか、満たされていないか(half full)、と表現しています。

刑事裁判の真実―あなたが裁判員なら、有罪か無罪か刑事裁判の真実—あなたが裁判員なら、有罪か無罪か
(2009/11)
飯田 一也

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